リアアクスル − エアサスペンション(レベリングサスペンション)

はじめに

エアスプリングリアサスペンションの役目は、どんな積載状態でも車高を正確に規定レベルに維持することです。 広範囲に渡り車高を一定に保つことにより、リアアクスルのサスペンションジオメトリーデータ(キャンバーやトーインなど)を積載量に関係なく維持します。 BMW では、E39 に初めてリアアクスルの全荷重をエアサスペンションストラットによって支持するシステムを採用しました。 このシステムの制御は、あらゆる作動条件下で自動的に、しかもドライバーの操作なしに行われます。

エアスプリングリアサスペンションは、不要な制御を抑制する設計になっています。

システムの利点:

- エンジンにより制御動作が左右されない

- 各ホィール別の制御が可能

- 積載状態および走行状態を識別

- 斜めに傾いた積載状態を検知/制御

- 自己診断

- コーナリング時および荷重時の制御中断

 

 

 

システム全体は以下のコンポーネントで構成されています:

- エア供給システム(LVA)

- 2 個のエアサスペンションストラット

- リアアクスルの 2 個のレベルセンサー(左/右)

- エレクトロニックコントロールユニット

- 表示灯(スタンダードメーターパネル)またはテキスト表示(ハイバージョンメーターパネル)

 

個々の部品の説明:

エア供給システム(LVA)

エア供給システムの構成:

- 内側に遮音材を取り付けたカバーフード

- コンプレッサー

- コンプレッサーリレー

- ソレノイドバルブブロック

- ディストリビューターブロックを含んだエアパイプ

コンプレッサーは最大13.5 bar の作動プレッシャーを供給します。 このコンプレッサーはメインテナンスフリーです。 電子制御モーター本体は直流モーターです。

重要!

コンプレッサーの熱による過負荷を防ぐために、電子制御モーターの作動時間がモニターされます: 最大 8 分間!

コンプレッサーリレーを介して、コンプレッサーに電流が流れます。

重要!

コンプレッサーリレーは交換できません! コンプレッサーリレーに不具合がある場合は LVA 全体を交換しなければなりません。

コンプレッサーからエアスプリングストラットへの電流(およびその逆)の制御用としてソレノイドバルブが採用されています。 各エアスプリングにはバルブが 1 個ずつ配置されています。 これらのバルブは個別に制御されます。

ニューマチックライン(エアパイプ)はソレノイドバルブブロックとディストリビュータブロック間を接続しています。 パイプは次のように色分けされています: 右用は青、左用は赤。 LVA とスプリングストラットへのエアパイプ間のニューマチックインターフェースとしてディストリビューターブロックが採用され、エアパイプ接続部に同じカラーマークが付いています。 ディストリビューターブロックはトランクルーム内、右側サイドメンバーの下部に取り付けられています。

エアサスペンションストラット

エアサスペンションストラットはエアタンク、ロールベローズ、エアの補助容積により構成されています。 ロールベローズはエアタンクとショックアブソーバー間の気密と可動連結を行い、その時々の積載状況に合わせてエアプレッシャーを内部に効果的にかけます。

車高センサー

車高センサーは、左右のリアガイドアームベアリングサポートに取り付けられています。 リアアクスルとのリンケージは、それぞれコネクティングロッドで連結されています。 コントロールユニットはこのリンケージの角度によって、車高に関する情報を受け取ります。 両方のセンサーはホールセンサーとなっています。

オプションでヘッドライト光軸調整が装備されている車両では、右側の車高センサーがダブルセンサーとして機能します。

コントロールユニット

コントロールユニットはトランクルーム内、右サイドメンバー下のモジュールボックスに納められています。

警告灯/テキストメッセージ

エアスプリングシステムの警告灯はスタンダードメーターパネルの中央、ASC 表示灯の隣にあります。 ハイバージョンメーターパネルでは、場合によってテキストメッセージでの故障表示が行えます。

システム全体の機能

このシステムはマイクロプロセッサーにより制御され、車両から離れた後ほぼ 16 分以内にドアまたはトランクリッドを開けると作動します。 コンプレッサーの電気アクチュエーターが、エンジンの状態とは無関係にシステムを制御します。

以下の信号が、エアサスペンションのコントロールユニットで評価されます:

- 負荷遮断信号

- 左側車高

- 右側車高

- Kl.15

- 車速

- エンジン作動/停止

- ドアとトランクリッドの状態に関する情報

車高はエアサスペンションストラットのエアの量により決まります。 エア供給システムのコンプレッサーおよび/またはバルブの制御により、エアサスペンションストラットのエア量が車両の荷重の変化に対応します。

LVA は、コントロールユニットによって切り換えられるバルブを介して、規定値に達するまでトランクルームからベローズにエアを供給します。

プレッシャーリリーフバルブはシステムをオーバープレッシャーから保護します。

下降プロセス(車両の荷重が少なくなる)では、コントロールユニットにより、対応するソレノイドバルブおよびアウトレットバルブがオンにされます。 バルブが開いてエアが大気中へ放出されます。

重要!

以下が正しく行われている時に限り、システムは正常に作動します: 生産ラインモードおよび輸送モードが消去され、車高レベルのオフセットが正しく行われていること! 生産ラインモードおよび輸送モードの消去、並びに車高のオフセットに関しては、診断プログラムの「サービス機能」の項に説明があります。生産ラインモードおよび/または輸送モードを消去すると、原則としては車高のオフセットを実行する必要があります!

信号および機能関係のパラメーターのモニターにより、システムの誤作動、特に不適切な制御を防止する安全設計が取られています。 故障が検知されると、関連するコンポーネントに左右されてシステムはオフになります。 ドライバーには、メーターパネルの警告灯またはテキストメッセージにより故障が知らされます。 検知された故障はディフェクトメモリーに登録されます。 登録可能な故障の数は 3 個です。

制御

車両の左側と右側は別々に制御されます。すなわち、規定値と実測値の比較が、両側で個別に行われます。 上昇制御(アップ)が行われる場合は、コンポーネントの許容作動時間がモニターされます。

傾斜状態

傾斜状態(停止状態)というのは、片方のホィールが障害物に乗り上げており、それ以外の 3 個のホィールは路面と同じ高さにある状態をいいます。 障害物上から発進した後、この傾斜状態は補正されないため、反対側に傾けるといった制御は行いません。 ただし、この状態で車両に大きな荷重がかかった場合は、地上最低高を確保するための制御は行われます。 傾斜状態の検知は、ノーマルモードまたは開閉モードで、コントロールユニットが車速信号を検知していない場合にのみ行われます。

制御の種類

システム制御の種類: 走行前モード/走行後モード、ノーマルモード、開閉モード、生産ラインモード、輸送モード

走行前/走行後モード

走行前/走行後モードでは、車高が中レベルの規定値を 40 mm 超えた場合にのみ、規定値まで制御されます。 したがって、積載荷重が大きい場合にのみ発進前の最低地上高を高める制御が行われるため、エンジンスタート前のバッテリー負荷が軽減されます。 積載量が小さいとバウンドの過程はわずかしかないので、エンジンスタート時に補正を行えば十分です。

ノーマルモード、開閉モード

ノーマルモードまたは開閉モードでは、それぞれ規定値への制御が行われます。 ノーマルモードでは、たとえば走行中に燃料タンクが空になる場合、または高速時の車体後部の揚力によって発生するリアアクスルの負荷変化が制御されます。 閉鎖モードでは、停止状態でテールゲートを開けた時の短時間の荷重の変化が補正されます。

生産ラインモード

納車状態の時、コントロールユニットは生産ラインモード、つまり作動停止状態になっています。セイフティーコンセプトは制限付きで作動します。 メーターパネルでは故障表示灯が作動します。

重要!

生産ラインモードの消去は、診断プログラムでのみ実行できます(サービス機能)!

生産ラインモードを取り外した後は、原則として車高のオフセットを実施する必要があります。 手順は、診断プログラムメニューの「サービス機能」、「車高のオフセット」を参照してくだい。

輸送モード

輸送モードでは車体後部の高さを約 30 mm 〜 40 mm 高くし、工場からディーラーへの輸送時の損傷を防止します。 制御動作は行われず、メーターパネルでは故障表示灯が作動します。

重要!

輸送モードの消去は診断プログラムでのみ実行できます! 新たに輸送を行なう時には輸送モードをセットすることもできます(サービス機能)。 これは、輸送モードがすでにセットされているかどうかに関係ありません。

輸送モードを消去した後は、原則として車高のオフセットを実施する必要があります。 手順は、診断プログラムメニューの「サービス機能」、「車高のオフセット」を参照してくだい。

K バス故障時のヒント

コントロールユニットが K バスから信号を得ることができない場合は、一番最後に受け取った信号(ドア、車速など)が有効です。コントロールユニットは、負荷遮断信号によってオフになるまで、最後に設定されたモードのまま変わりません。 次のスタート時または原則的にスタート時に交信がない場合、コントロールユニットは走行前/走行後モードのままで、ドライバーはメーターパネルの故障表示灯を介して、故障があることを知らされます。