冷却系特性マップ

 

ウォーター ポンプ

ポンプ ハウジングはアルミ ダイカストまたはプラスチック製で、タイミング ケース カバー内部にねじ止めされています。ウォーター ポンプのハウジング内には、クーラント用ダブル温度センサーが取り付けられています。このダブル温度センサーは、エンジン側のクーラント出口に取り付けられています。

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ダブル温度センサー付きウォーター ポンプのクローズ アップ

 

ラジエター

国別仕様によっては、ラジエターにもう 1 つエンジン オイル クーラーを追加装備しているものもあります。

標準型のサーモスタットの機能

標準的なサーモスタットによるエンジン冷却制御は、クーラント温度にのみ依存しています。エンジン水温の制御は、下記の 3 つの動作に分けることができます:

この作動範囲(サーモスタットの制御範囲)の場合、クーラント温度は特性マップ制御式サーモスタットによって効果的に制御されます。

この制御により、部分負荷域でクーラント温度を比較的高く調整することができます。部分負荷域で作動温度が高くなると、燃費が良くなり、有害物質の排出が低減されます。

フル ロード時に作動温度が高くなると、不利な現象が発生します(ノッキングによる点火タイミング リタード)。したがって、フル ロード時は特性マップ制御式サーモスタットにより、クーラント温度が低温に制御されます。

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冷却系特性マップの制御特性

1

110 o C のサーモスタットの特性曲線

2

特性マップ制御式サーモスタットの特性曲線

3

85 o C のサーモスタットの特性曲線

4

部分負荷域

5

フル ロード時

6

部分負荷域

このサーモスタットの働きにより、部分負荷域におけるクーラント温度を最適な状態に高めることができます。エンジン水温が高くなれば、エンジンの部分負荷状態での燃費が向上します。この特性マップ制御式サーモスタットの制御は、エンジン コントロール ユニットにより特性マップに応じて行われます。

この特性マップは、下記の要因で決まります:

特性マップ制御式サーモスタットの構造

特性マップ制御式サーモスタットは一体型サーモスタットです。つまり、サーモスタットとサーモスタット カバーがひとつのユニットになっています。

特性マップ制御式サーモスタットの機械的構造は、標準的なサーモスタットと同じです。ただし、膨張剤(ワックス エレメント)には、ヒーター エレメントが内蔵されています。

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特性マップ制御式サーモスタットの断面図

 

特性マップ制御式サーモスタットのサーモスタット カバーは、アルミ ダイカスト製です。サーモスタット カバーには、特性マップ制御式サーモスタットの膨張剤部分に組み込まれたヒーター エレメント用のコネクターがあります。

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ヒーター エレメント用コネクター付き特性マップ制御式サーモスタット

 

特性マップ制御式サーモスタットの機能

特性マップ制御式サーモスタットは、サーモスタットまわりのクーラント温度が 103 oC のとき、内蔵ヒーターの制御動作なしに開くように設定されています(エンジンへの入口部)。クーラントはエンジン内部で加熱されるので、この作動状態ではエンジンからの出口部分(メーター パネルおよび DME 用のクーラント温度センサー取付け位置)における水温は約 110 o C になります。エンジン作動温度がこの温度に達すると、特性マップ制御式サーモスタットは自動的に開き始めます。

DME コントロール ユニットによる制御動作が行われる際は、サーモスタットに組み込まれたヒーター エレメントに電流(12 V)が流れます。温度に応じてサーモスタットの開度を決める膨張剤が加熱されます。この膨張剤が加熱されると、非加熱の場合よりも低いクーラント温度でもサーモスタットが開きます(サーモスタット制御範囲):約 80 oC - 103 oC

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1

サーモスタットの開度

2

クーラント温度

3

ヒーター エレメント制御電圧:12 V

4

ヒーター エレメント制御電圧:0 V

エンジン アウトプットのクーラント温度が 113 oCを超えると、他のパラメーターには関係なく、DME により特性マップ制御式サーモスタットのヒーターがオンになります。

診断

特性マップ制御式サーモスタットのケーブル コネクターおよび機能は、DME コントロールユニットの診断でモニターされます。故障が発生すると、DME コントロールユニットのディフェクト メモリーに故障が登録されます。

メーターパネルの水温計

メーター パネルのクーラント温度計の表示特性は、特性マップ制御式サーモスタットの採用による比較的高いエンジン温度レベルに合わせてあります。

メーター パネルのクーラント温度計の指針は、クーラント温度範囲が

75 oC - 113 o C

で中央になります。