注意事項!本ドキュメントの構造。
本ドキュメントの最初には、最も重要な診断上の注意事項が記載されています。 それに続いて、機能説明が記載されています。
修理後、ディフェクト メモリー消去時に問題が発生する場合、以下の手順を進める必要があります:
注意!
表示灯と警告灯は、特定の故障の場合、短距離のテスト走行後にようやく消灯します。
DSC ユニットまたは DSC コントロール ユニット交換後:Progman によるタイア空気圧警告(RPA)およびクルーズ コントロール用のパラメーターをコーディングする必要があります。
DSC 機能に関して、DSC コントロール ユニット自体がコーディングを行います。この手順の際、車体番号もメモリーされます。従って、舵角センサーの同期は DSC 8/DSC 8Plus では不要です。
始動ごとに(イグニッション オン)、DSC はメモリーされた車体番号を実際の車体番号と比較します。
車体番号が一致しない場合、DSC は車両タイプに応じてコーディングされます。この時にセンサーの学習された調整値が基本調整にリセットされます(例外:
前後方向加速度センサー)。
以下の作業を行ってください:
DSC センサー交換後、サービス機能「DSC センサー同期」を実施する必要があります。DSC センサーで、前後方向加速度センサーが同期されます。
舵角センサーは、ステアリング コラム スイッチ センターと一体化されています。舵角センサーは、個別に交換することはできません。サービス機能「舵角センサー同期」またはアクティブ ステアリング装備車のサービス機能「アクティブ ステアリング セットアップ/調整」は、以下の作業後に実施する必要があります:
E70 にはダイナミック スタビリティ コントロール(DSC)が標準装備されています。
2007 年 3 月生産以降の E60/E61。
DSC は DSC 8Plus の発展型です。区別するため、このシャシー コントロール システムを「DSC プレミアム」と呼びます。DSC は Bosch 製です。
DSC の制御機能はさらに最適化されています。6 個のピストンを備えたリターン ポンプならびにより高性能な電子回路の導入による改善が行われました。 従来のモデル(E53)と比較すると、E70 は以下の拡張された機能を備えています:
他のシステムとの組合せにより、さらなる走行安全性がもたらされています:
DSC は走行安定性を維持する、走行特性に関するシステムです。DSC は下記を最適化します。
DSC は更にアンダーステア、オーバーステアなどの不安定な走行状態を認識します。DSC は車両を一定の物理的限界内で安全に走行させるために有用です。
このために DSC は下記の走行力学的測定値を知る必要があります:
更に舵角、およびペダルから伝えられるブレーキ圧から運転者の要求を判定します。またホィール スピード センサーが個々のホィールの速度の情報を発信します。
得られた測定値から、車両の現在の運動状態が判定されます。この減算の状態を DSC コントロール ユニットで計算された規定値と比較し、両者に差があれば DSC が作動してブレーキ システムまたはエンジン コントロールに作用します。
ダイナミック スタビリティ コントロールのコンポーネントを説明します。
DSC ユニットは DSC コントロール ユニットとハイドロリック ユニットから成っています。DSC コントロール ユニットはバルブ コイルを介してハイドロリック ユニットを制御します。
インデックス |
説明 |
インデックス |
説明 |
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1 |
コネクター付き DSC コントロール ユニット |
2 |
ハイドロリック ユニット |
3 |
ポンプ モーター |
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|
DSC ユニットはブレーキ圧センサーを備えています。
ブレーキ圧センサーは、ブレーキ ペダルとブレーキ ブースターによって作り出されたブレーキ圧を測定します。
ブレーキ圧センサーの測定範囲は 0 〜 250 bar です。
センサーの 0 点調整は走行中にのみ行われます。
新たなコンセプトの DSC ユニットでは、より正確な制御が可能になっています。ポンプ モーター内では 6.5 mm の 2x 3 ポンプ エレメントが作動します。このコンセプトにより、圧力の動特性が明らかに改善されています。その結果、ABS 制御時のブレーキ ペダルの脈動が減少します。
さらに、ヒル ディセント コントロール(HDC)時の性能が高まっています。
インデックス |
説明 |
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説明 |
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A |
DSC 8 プラス |
B |
DSC プレミアム |
1 |
流量(l/min) |
2 |
時間(s) |
ジャンクション ボックス コントロール ユニット(JBE)のパワー ディストリビューションが DSC ユニットに電圧を供給します。Kl. 30 が時にはリターン ポンプ用に、時にはソレノイド バルブ用に用いられます。DSC コントロール ユニットには Kl. 30g があります。
アクティブ ABS センサーは個々のホィールのホィール回転速度を測定します。さらに、ABSセンサーは回転方向(前進または後退)を検知します。
ホィール停止時には、ABS センサーが
0.75 秒ごとに 1 つのパルスを送信します。電流パルスにより、ABS センサーを使用できるかどうかが表示されます。
アクティブ ABS センサーにより、以下の利点がもたらされます:
インデックス |
説明 |
インデックス |
説明 |
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1 |
フロント ホィール スピード センサー |
2 |
リア ホィール スピード センサー |
3 |
回転数用パルス |
4 |
回転方向、エア ギャップ等の補足インフォメーション |
5 |
信号の変化 |
6 |
マグネット付きホィール ベアリング |
フロントおよびリア アクスルのホィール ベアリング周りには、マグネットで出来たリング(インクレメンタル ホィール)があります。インクレメンタル ホィールには N 極と S 極が交互に並んでいます。1 個の N 極と 1 個の S 極がインクレメント 1 個に相当します(パルス ホィールの歯/欠損部に相当)。ABS センサーは 3 個のホール センサーと 1 個の評価回路で構成されています。
アクティブ ABS センサーは磁界の影響を受けて電気抵抗を変化させます。各インクレメントが ABS センサーに 2 個のパルスを生成させます(ホィール 1 回転につき 96 個のパルス)。 コントロール ユニットにデータを伝送するために、パルスのエッジにさらに補足データを付け加えます。この統合されたデータ処理機能は、単なる回転数検知以上のものです。補足インフォメーションには、例えば以下のものが考えられます:
DSC センサーは下記を測定します。
インデックス |
説明 |
インデックス |
説明 |
---|---|---|---|
1 |
DSC センサー |
2 |
コネクター |
センサー エレメントは 2 つの圧電式加速度センサーから成っています。
加速度センサーの測定セル内には錘が弾性的に吊り下げられており、
車両が加速されると 2 つの錘が同時に加速されます。これに必要な力は圧電材料に機械的応力を発生させ、
それによる電荷移動が金属電極に捕捉され、電気信号として更に処理されます。
2 つの加速度信号の差からヨーレートが導出されます。このようにして DSC センサーは常にヨーレートと加速度の信号を発生しています。
前後方向加速度センサーは発進アシストのために必要です。
DSC センサーはシャシー用 CAN バス(F-CAN)を介して DSC コントロール ユニットに接続されています。
DSC コントロール ユニットが DSC センサーに電圧を供給します。
舵角センサーはステアリング コラム スイッチ センター(SZL)に取り付けられています。舵角センサーは舵角を光学的に無接点式で測定します。舵角センサーは回路基板上に評価回路とともに固定されています。舵角センサーは以下のコンポーネントで構成されています:コード ディスクおよび光学センサー。
コード ディスクはコイル スプリング カセットを介してステアリング ホィールに接続されています。ステアリング ホィールを動かすと、光学センサー内部のコード ディスクが動きます。コード ディスク上には評価のためのさまざまなライン パターンがあります。
インデックス |
説明 |
インデックス |
説明 |
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1 |
ステアリング コラムのスイッチ ユニット(SZL) |
2 |
光学センサー |
3 |
コード ディスク |
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SZL はシャシー用 CAN バス(F-CAN)を介して DSC コントロール ユニットに接続されています。
DTC キーでシャシー コントロール システムの作動状態が切り換わります。DTC キーには「DTC」という文字が記載されています。DTC キーで 3 種類のスイッチング状態を選択できます:
E70:
DTC キーはセンター コンソール スイッチ センターにあります(コントロール ユニットなし)。センター コンソール スイッチ センターはオートマチック ヒーター/エア コンディショナー(IHKA)に接続されています。IHKA が K-CAN 上に信号を送信します。
2007 年 3 月生産以降の E60/E61:
DTC キーは灰皿の左横、スイッチ ブロック内にあります。スイッチ ブロックは、センターコンソール スイッチ センター(SZM)に接続されています。SZM コントロール ユニットは、グローブ ボックス後方のユニット キャリア内に取り付けられています。
図は E70 を示します。
インデックス |
説明 |
インデックス |
説明 |
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1 |
センター コンソールのスイッチ センター |
2 |
HDC キー HDC はヒル ディセント コントロールを意味します:ヒル ディセント コントロール |
3 |
DTC キー |
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E70:
HDC キーもセンター コンソール スイッチ センターにあります。
E60/E61:
ステアリング ホィールの自由にプログラミング可能なキーに、ヒル ディセント コントロール(HDC)を割り当てることができます。さらに、HDC は iDrive から作動させることができます。
DSC はその他に下記の構成部品からの入力信号を受けます。
ブレーキ液レベルが過小になったことを検知し(エクスパンション タンクのリード コンタクトによる)、DSC コントロール ユニットに通告します。ブレーキ液レベルが過小になると DSC は停止します。これはブレーキ システムに空気が吸入されるのを防ぐためです。
ブレーキ圧センサーからの信号によってブレーキ動作が検知されます。
ブレーキ ライト スイッチには 2 つのスイッチ(2 ステージ)が組み込まれており、ケーブルを通じて DSC に信号を送信します。両信号はエンジン コントロール ユニットに達します。エンジン コントロール ユニットは信号を PT-CAN に送出します。
これらの信号により DSC コントロール ユニットが、ブレーキ ペダルが踏まれているかどうかを判定します。
インデックス |
説明 |
インデックス |
説明 |
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1 |
ブレーキ ライト スイッチ |
2 |
コネクター |
カー アクセス システム(CAS)がブレーキ ライト スイッチに Kl. R を供給します。
ブレーキ パッド磨耗センサー(左後と右前の内側ブレーキ パッドに設置)はブレーキ パッドの厚さに関する追加的な情報源です。この情報(サポート位置 2 箇所)によって DSC の計算値がチェックされます。
インデックス |
説明 |
インデックス |
説明 |
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1 |
ブレーキ ディスク |
2 |
ブレーキ キャリパー |
3 |
ブレーキ パッド磨耗センサー(リア アクスルの例) |
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ブレーキ パッドの厚さが限界に達すると、メーター パネルにサービス要求表示(コンディション ベースド サービス、CBS)およびブレーキ警告灯によって赤色表示されます。
ダイナミック スタビリティ コントロールには以上のほかに次のコントロール ユニットが関与しています。
DSC に故障または不具合があると、液晶ディスプレイにチェック コントロール記号が表示されます。チェック コントロール記号はすべて一定の意味を持っています。
チェック コントロール メッセージが存在するときは、補足操作説明をセントラル インフォメーション ディスプレイ(CID)に表示させることができます。
カー アクセス システム(CAS)は DSC から評価済みの回転数信号を受け取り、車両が停止しているか走行中であるかを判定します。
ジャンクション ボックス コントロール ユニットのパワー ディストリビューションが DSC ユニットに電圧を供給します。
Kl. 30 はリターン ポンプならびにソレノイド バルブ用に用いられます。
Kl. 30g は DSC コントロール ユニット用に用いられます。
図は E70 を示します。
インデックス |
説明 |
インデックス |
説明 |
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1 |
左フロント ホィール スピード センサー |
2 |
左フロント ブレーキ パッド磨耗センサー |
3 |
ブレーキ液レベル スイッチ |
4 |
右フロント ホィール スピード センサー |
5 |
ダイナミック スタビリティ コントロール(DSC) |
6 |
デジタル モーター エレクトロニクスまたはデジタル ディーゼル エレクトロニクス(DME または DDE) |
7 |
ジャンクション ボックス コントロール ユニット(JBE) |
8 |
右リア ホィール スピード センサー |
9 |
左フロント ブレーキ パッド磨耗センサー |
10 |
トランスファー ギア ボックス(VTG) |
11 |
DSC センサー |
12 |
ステアリング コラム スイッチ センター(SZL) |
13 |
左リア ホィール スピード センサー |
14 |
カー アクセス システム(CAS)CAS |
15 |
メーター パネル(KOMBI) |
16 |
オートマチック ヒーター/エア コンディショナー(IHKA) |
17 |
センター コンソールのスイッチ センター |
18 |
ブレーキ ライト スイッチ |
F-CAN |
シャシー CAN |
K-CAN |
ボディ コントローラー エリア ネットワーク |
Kl. 30 |
ターミナル30 |
Kl. 30g |
Kl.30g |
PT-CAN |
パワー トレイン CAN |
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DSC のための以下の E70 にとって新しいシステム機能について説明します:
DSC のためのこの他のすでに知られているシステム機能は:
以上のほか、走行ダイナミクス制御に属さない次の機能が内蔵されています。
DTC は特定の路面状況のために駆動力を最適化した、DSC の一つの仕様です。ダイナミック トラクション コントロール(DTC)は部分的に走行安定性が低下したときに駆動伝達を改善するため、例外的な状況でのみ使用することをお奨めします。以下の例外的な状況下では、DTC を短時間作動させると有効です:
DTC の機能はコントロール プランを若干変更した DSC に相当します。DTC は DSC をオフにすることによって(DTC キー)作動させることができます。DTC はブレーキ制御により標準型ディファレンシャル ロックの機能を再現します。それにより、ホィールのドライビング トルクが高まり、パッドの摩擦係数が高まります。
利点:DTC により、より高い駆動伝達力が得られます。車両を安定化させる動作(例えば、エンジン出力の低減)は、DSC よりもやや遅れて実行されます。特定の状況下では、車両を安定化させるために運転者自身がより大きな修正動作を行う必要があります。
ブレーキ パッドを早めに当てることにより、ブレーキの反応時間が短縮します。アクセル ペダルを素早く放すことにより(アクセル ペダルの角度)、ブレーキ パッドが即時に当てられます。DSC は車両を測定可能なほど減速させることなく、低いブレーキ圧を生成します。それにより、ブレーキ パッドとブレーキ ディスク間のエア ギャップが補正されます。0.5 秒以内にブレーキが踏まれない場合は、早めに生成されたブレーキ圧が再び取り消されます。 ブレーキ パッドを早めに当てる機能は、車速が 70 km/h 以上になると作動します。
ぬれた路面や雨の中の走行時にブレーキ ディスクに付着した水分を、ブレーキを乾燥させることによって取り除きます。 その際、ブレーキ パッドが軽く当てられます。この機能も、ブレーキの反応時間を短縮します。レイン センサーの信号又はワイパー スイッチの位置に応じて、DSC が周期的に低いブレーキ圧を生成します。その際、車両は測定可能なほど減速することはありません。ブレーキ パッドが周期的に当てられます。その際、ブレーキ ディスクが定期的に洗浄されます。ブレーキ パッドがどの程度の頻度で、どの位の間当てられるかは、以下に応じて異なります:
フェーディングとは、ブレーキ ディスク温度が高まることによって、ブレーキ作用が低下することです。フェーディングが検知されると、DSC が、運転者によってプリセットされたブレーキ圧よりもブレーキ圧を高めます。ブレーキ ディスクの温度が非常に高くなると、フェーディング補正により以下が表示されます:
DSC は以下のようにフェーディングを検知します:DSC はその時点での車両の減速度とその時点でのブレーキ圧に関する規定値を比較します。規定の減速度に達するまで、またはすべてのホィールが ABS 制御されるまで、DSC がブレーキ圧を高めます。ブレーキ ペダルが放される、または車速範囲を下回ると、動作が終了します。
坂道発進ではブレーキ ペダルとアクセル ペダルの踏み分けが必要です。発進アシストは次のような場合に車両の不用意な動きを防止します。
このためには車両の保持に必要なブレーキ圧を維持する必要があります。DSC コントロール ユニットが前後方向加速度センサーにより路面の勾配を測定し、必要なブレーキ トルクまたはエンジン トルクを計算します。発進の意図が検知されると、車両を希望する方向へ動かすのに必要なエンジン トルクが達成された直後にブレーキ圧を低下させます。 パーキング ブレーキを操作すると発進アシストは無効になります。またブレーキ ペダルを緩めてから約 2 秒の間に発進の意図が認められないときも、発進アシストは無効になります。
ブレーキ機能付きクルーズ コントロールの機能は、DSC に統合されています。クルーズ コントロールは 30 km/h 〜 250 km/h の選択された速度に常に車速を保ちます。
従来のクルーズ コントロールと比較すると、以下の補助機能があります:
EMF はパーキング ブレーキです。
エンジン作動中は、DSC が保持力を油圧により調達します。
エンジン停止時には、EMF が制御ユニットを介して保持力を機械的に調達します。
アンチロック ブレーキ システム(ABS)は制動時にホィールがロックされるのを防止します。その利点は、制動距離が短く車両の方向安定性、操縦性が保たれることです。すべてのホィールにおいてスリップ領域が最適となるようにブレーキ圧が制御されます。スリップは、ブレーキおよびコーナリング フォースが最もよく伝達されるように制御されます。
エレクトロニック ブレーキ フォース ディストリビューション(EBV)は ABS の一構成要素で、フロント アクスルとリア アクスルへのブレーキ力の分布を積載状態に応じて制御します。 その利点は、積載状態の如何に関わらず最適な制動距離と高い走行安定性が得られることです。ブレーキ パッドの磨耗の分布状態も改善されます。ABS に不具合があっても EBV 機能は可能な限りの時間にわたって維持されます。EBV 機能に対しては、各アクスルについて最低 2 つのホィール スピード センサーからの信号が必要です。
コーナリング ブレーキ コントロール(CBC)は ABS を拡張した機能で、カーブ走行中にブレーキを踏んだときの走行安定性を高めます(「カーブ ロジック」)。その利点は、コーナリング時に部分制動状態での走行安定性を最適化できることです。 コーナリング時にはホィール荷重が移動するため、(軽くブレーキを踏んだだけでも)走行安定性が減少します。CBC は必要に応じて、ABS の制御範囲外の軽いブレーキングに対して、逆モーメントを発生させて安定化を図ります。
エンジン トルク レギュレーター(MSR)は、滑りやすい路面で駆動輪のブロック傾向を防止します。シフト ダウンや急激な負荷変動の際には(特に摩擦係数の低い路面では)駆動輪がエンジン トルクのためブロックする危険があります。MSR はホィール スピード センサーにより、ブロッキング傾向を開始時点で認識します。MSR は僅かな加速によってエンジン トルクを短時間低減します。その利点は、 駆動輪のコーナリング フォースがオーバーラン時にも維持されることです。
オートマチック スタビリティ コントロール(ASC)はブレーキングおよびイグニッションのタイミングを調節して加速時のホィールの空転を防止します。その利点は、トラクションが増大し、走行安定性が増すことです。駆動軸のホィールのグリップが左右で異なるとき、空転傾向にあるホィールを制動し、必要に応じエンジン出力も低減します。
ダイナミック スタビリティ コントロール(DSC)はセンサー信号の評価により、車両の各時点での走行状態を把握し、これを計算モデルから得られた規定値と比較します。これによって不安定な走行状態はその開始時点から検出されます。DSC コントロール ユニットに保存されている制御限界を超える偏差が生じたときは、車両が安定化されます。安定化(物理的限界内での)の手段は、エンジン出力の低減と、各ホィールの個別的な制動です。 DSC の作動は ABS と ASC の機能を重ねあわせることです。DSC 機能はキーにより解除することができます。 R56 にはダイナミック トラクション コントロール(DTC)は装備されていません。
ダイナミック ブレーキ コントロール(DBC)は緊急ブレーキが必要な場合に、ブレーキ圧を自動的に増大させます。その利点は、4 輪すべての ABS 制御により、制動距離が可能な限り短縮されることです。緊急ブレーキの際には、ブレーキ ペダルの踏み込みが十分でないため ABS の制御範囲に到達しないことがしばしばあります。次のような場合には、リターン ポンプにより ABS の制御範囲に入るまでブレーキ圧が増強されます。
ダイナミック スタビリティ コントロール(DSC)は、xDrive の場合、4 輪制御用の規定値をプリセットします。DSC コントロール ユニットはトランスファー ギア ボックス内の多板式クラッチ用のロッキング トルクを演算します。規定値は車両のオーバーステアまたはアンダーステア傾向とホィール スリップにより異なります。規定値は PT-CAN 経由で VTG コントロール ユニットに送信されます。VTG コントロール ユニットは実際に調整されたロッキング トルクを DSC コントロール ユニットにフィードバックします。 DSC コントロール ユニットは多板式クラッチのロッキング トルクを以下のように演算します:
ヒル ディセント コントロール(HDC)は 4 輪駆動車の山道走行用のオートマチック クルーズ コントロールです。 HDC はセンター コンソール スイッチ センターでオンおよびオフにできます。HDC は車速を自動的に低減します。4 つのホィールすべてをブレーキ制御することにより、徐行速度よりやや高い速度まで車速が低減されます。それにより、急勾配のすべりやすい路面でも安定した山道走行が可能になります。HDC はこの車速に常に保ちます(DSC 機能はすべてオンになったまま)。アクセル ペダルおよびブレーキ ペダルまたはクルーズ コントロール用のステアリング コラムのレバーで、車速を一定の範囲内で無段階で変えることができます。生産ラインで、マルチ ファンクション ステアリング ホィールの下側の自由にプログラミング可能なキーに、HDC があらかじめ割り当てられています。
トレーラー スタビリティ コントロールは垂直軸周りのトレーラーの揺れを検知します。 このシステムはトレーラー ソケットが使用されているとき、車速が約 65 km/h 以上になると作動します。ダイナミック スタビリティ コントロール(DSC)が DSC センサーを用いて車両のヨーイング運動をモニターします。トレーラーが揺れ動いたときに限界値を超えると、エンジン出力が低減されます。さらに、DSC が 4 つのホィールすべてに自動的にブレーキをかけます。DSC が作動解除されている、または DSC に不具合があるときには、トレーラー スタビリティ コントロールも作動しません。
タイア パンク表示(RPA)は走行ダイナミクス制御の機能ではありません。RPA 機能は、4 つのホィールの回転数信号を必要とするため、DSC コントロール ユニットに組み込まれています。このシステムは 4 つのホィールの回転数によって回転半径を比較することにより、
タイア圧の緩やかな現象を検知します。
RPA は次のようにして初期化することができます。
CBS は走行ダイナミクス制御の機能ではありません。コンディション ベースド サービスとは「必要に応じたサービス」を意味します。
CBS にはエンジン オイル、スパーク プラグ、ブレーキ パッドなど各種のメインテナンス範囲が統合されています。
前後のブレーキ パッドの残存走行距離は別個に DSC コントロール ユニットで計算されます。
計算に際してはブレーキ パッド磨耗センサーの状態も参照されます(サポート位置 6 mm、4 mm)。
注意!DSC コントロール ユニットを交換します。
DSC コントロール ユニットの交換時には、リペア マニュアルを確認する必要があります(スペシャル ツールが必要)。
BMW 診断システムでは以下のサービス機能が利用できます:
交換後は DSC コントロール ユニットのコーディングが必要です。
エンジンを始動するたびに DSC は作動可能となります。
誤記、誤植が生じる可能性があるため、完全な一致を保証するものではありません、また将来予告なしに技術的変更が加えられることがあります。