アダプティブ ドライブ

上下ダイナミック マネージメント

E70 にはオプション 2VA「アダプティブ ドライブ」を装備することができます。このオプションは 2 個のシステムで構成されています:
上下ダイナミック マネージメント(VDM)およびアクティブ ロール スタビリティ(ARS:販売名称はダイナミック ドライブ)。このドキュメントでは、上下ダイナミック マネージメントについて説明します。

上下ダイナミクス マネージメントには以下の利点があります:

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説明

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1

VDM コントロール ユニット

2

右リア ダンパー サテライト(EDCSHR)付きショック アブソーバー

3

右リア車高センサー

4

左リア車高センサー

5

左リア ダンパー サテライト(EDCSHL)付きショック アブソーバー

6

左フロント ダンパー サテライト(EDCSVL)付きショック アブソーバー

7

左フロント車高センサー

8

右フロント車高センサー

9

右フロント ダンパー サテライト(EDCSVR)付きショック アブソーバー

 

 

F-CAN

シャシー CAN

FlexRay

サブ バス

PT-CAN

パワー トレイン CAN

 

 

EDC の意味:エレクトロニック ダンパー コントロール

上下ダイナミック マネージメント(VDM)は E65 のエレクトロニック ダンパー コントロール(EDC-K)の発展型です。VDM は 1 個のメイン コントロール ユニットとショック アブソーバーに固定接続された 4 個のインテリジェント ダンパー サテライトで構成されています。
データ ケーブルには、初めてデータ バス FlexRay が導入されています。

コンポーネント簡略説明

上下ダイナミック マネージメントの以下のコンポーネントについて説明します:

VDM:上下ダイナミック マネージメント

VDM コントロール ユニットはトランク ルーム内右リアのユニット キャリアに固定されています。

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1

コンフォート アクセス(CA)

2

トレーラー モジュール(AHM)

3

パークディスタンスコントロール(PDC)

4

上下ダイナミック マネージメント(VDM)

5

エレクトロニック ハイト コントロール(EHC)

 

 

VDM は走行快適性を高めます。ボディの上下方向の動きをできる限り少なくすることにより、高い走行快適性が得られます:路面から車両に伝わる(凹凸、継ぎ目)による上下方向の動きも、コーナリング時の上下方向の動きも、できる限り抑えます。
VDM コントロール ユニットは各ダンパー サテライトにショック アブソーバーの制御をプリセットします(ホィール別の減衰力)。そのために、VDM コントロール ユニットは超高速データ バス FlexRay を介してダンパー サテライトに接続されています。

データ転送速度が 10 MBit/s の FlexRay は、今日自動車(ボディおよび駆動系またはシャシー領域)に採用されているデータ バスよりもはるかに高速です。FlexRay は高い回線容量を備えているだけでなく、リアル タイム データ転送をサポートします。FlexRay は不具合に対応できる環境設定を行うことができます。

ダンパー サテライト

4 個のダンパー サテライトがあります:

ダンパー サテライトは減衰力の電気制御を行います。ダンパー サテライトと EDC バルブは、分離できないようにショック アブソーバーに接続されています。各ダンパー サテライトには、専用の上下方向加速度センサーが備えられています。ダンパー サテライトは特に以下のような役割を果たします:

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ダンパー サテライト:左フロント アクスルの例

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1

左フロント ダンパー サテライト(EDCSVL)

2

スチール スプリング

3

ショック アブソーバー

4

EDC バルブ

 

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ダンパー サテライト:右リア アクスルの例

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1

右リア ダンパー サテライト(EDCSHR)

2

EDC バルブ

3

ショック アブソーバー

 

 


車高センサー

合計 4 個の車高センサーがあります:

4 個の車高センサーは VDM コントロール ユニットに接続されています。車高センサーはボディの車高に関する情報を VDM コントロール ユニットにダイナミックに供給します。それを元にして、上下ダイナミクス マネージメントがボディの動きおよびホィール加速度を算出します。
さらに、センサーは情報をヘッドライト自動光軸調節装置に伝えます。

リア アクスルのダブル車高センサーは、信号を VDM コントロール ユニットにだけではなく EHC コントロール ユニットにも供給します。ダブル車高センサーには、ハウジングに「ダブル」の文字が記載されています。

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車高センサー:左フロント アクスルの例

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1

車高センサー

2

オペレーティング ロッド

 

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車高センサー:左リア アクスルの例

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1

車高センサー

2

オペレーティング ロッド


SPORT キー

SPORT キーはセンター コンソールのセレクター スイッチ(GWS)後方にあります。SPORT キーを操作すると、減衰特性が変わります:
コンフォート <-> スポーツ。
SPORT キーはセレクター スイッチ(GWS)に電気的に接続されています。GWS は専用のコントロール ユニットです。信号は PT-CAN にアウトプットされます。

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1

パーキング ブレーキ ボタン

2

セレクター スイッチ(GWS)

3

SPORT キー

 

 

SPORT キーの LED 表示は、スポーツ プログラムが作動していることを示しています。また、メーター パネルの液晶ディスプレイに「Sport」が表示されます。


以下のコントロール ユニットが上下ダイナミック マネージメント用の信号を供給します:

ARS:アクティブ ロール スタビライザー

ARS コントロール ユニットは横方向加速度を PT-CAN 経由で VDM に供給します。VDM コントロール ユニットは代替サイズとしての信号を必要とします。

DSC:ダイナミック スタビリティ コントロール

DSC コントロール ユニットは車速ならびにブレーキ圧を PT-CAN 経由で VDM に供給します。

SZL:ステアリング コラム スイッチ センター

SZL は舵角センサー信号を F-CAN 経由で VDM に供給します(コーナリング走行の早めの検知)。

DME または DDE:デジタル モーター エレクトロニクスまたはデジタル ディーゼル エレクトロニクス

エンジン コントロールは「エンジン回転」信号を送ります。信号が PT-CAN へ転送されます。

JBE:ジャンクション ボックス コントロール ユニット

JBE はターミナル ステイタスを供給します。さらに、JBE は PT-CAN と K-CAN 間のゲートウェイです。

GR_FB3706013

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1

ステアリング コラムのスイッチ ユニット(SZL)

2

左フロント ダンパー サテライト(EDCSVL)

3

左フロント車高センサー

4

デジタル モーター エレクトロニクスまたはデジタル ディーゼル エレクトロニクス

5

右フロント車高センサー

6

右フロント ダンパー サテライト(EDCSVR)

7

右リア ダンパー サテライト(EDCSHR)

8

右リア車高センサー

9

VDM コントロール ユニット

10

左リア ダンパー サテライト(EDCSHL)

11

DSC センサー

12

左リア車高センサー

13

アクティブ ロール スタビライザー(ARS:ダイナミック ドライブ)

14

ジャンクション ボックス コントロール ユニット(JBE)

15

SPORT キー付きセレクター スイッチ

 

 


システム機能

上下ダイナミック マネジメントの以下のシステム機能について説明します:

ホィールの動きならびにボディの動きの減衰

ホィールの動きおよびボディの動きの減衰のために、車両の動きがモニターされます。その際、以下の軸が含まれます:

モニターのため、例えば以下の信号が使用されます:

信号から現在の走行状態が算出されます。

車両の垂直軸に関して、減衰の制御がコンフォートとセーフティに区分されています。
上下ダイナミクス マネージメントはコンフォートのためにボディの動きを減衰させます。
上下ダイナミクス マネージメントはセーフティのためにホィール加速度を減衰させます。その際、ホィールが路面との接触を失わないようにする必要があります。状況に応じて、最適な接地力を伝達する必要があります。

上下ダイナミック マネジメントは操舵角も考慮します(例えば、カーブでの直進走行への移行)。舵角の素早い増加が検知されると、VDM コントロール ユニットはコーナリング走行が始まったと判断します。そのため、前もってショック アブソーバーを適切に制御することができます。上下ダイナミクス マネジーメントは、それによってアクティブ ロール スタビライザー(ARS)をサポートします。それと共に、VDM は車両のローリングの抑制に寄与します。

上下ダイナミクス マネジーメントは、ブレーキ動作と加速動作も検知します。そのため、DSC がブレーキ圧と前後方向加速度に関する信号を供給します。高いブレーキ圧は通常、車両を前のめりにさせます。VDM はフロント ショック アブソーバーをよりハードに調整することによって、車両が前のめりになるのを防ぎます。加速時に車両が前のめりになるのも防ぎます。

選択された減衰特性(SPORT キーを介したコンフォートまたはスポーツ)に応じて、減衰力のレベルが VDM コントロール ユニットによって適合されます。それとは無関係に、危険な走行状態のときにはコンフォート プログラムが選択されていても最高の走行安全性が得られます。

フェイル セーフ(Fail Safe)

不具合の種類に応じて、フェイル セーフが 3 ステージで作用します:

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1

チェック コントロール メッセージ

 

 


サービスに関する注意事項:

一般注意事項

注意!ショック アブソーバーを交換する際には、取付け位置を記載します。

ショック アブソーバーは、ダンパー サテライトおよび EDC バルブとともに、ユニットとして交換可能です。新品を注文する際には、車両タイプおよび取付け位置(例えば左フロント)を記載する必要があります。以下に関係しています:エンジン バリエーション、サスペンションおよびオプション装備品(3 列シート車など)。

診断上の注意事項

注意事項:上下ダイナミック マネジメントの複数のディフェクト メモリー。

VDM コントロール ユニットは、自らの不具合のみを専用のディフェクト メモリーに登録します。ダンパー サテライトの不具合は、ダンパー サテライトのディフェクト メモリーに登録されます。そのため、不具合時には VDM コントロール ユニットのディフェクト メモリーだけでなく、ダンパー サテライトのディフェクト メモリーも読み出す必要があります。ダンパー サテライトは BMW 診断システムからアクセス可能でなければなりません。そのため、VDM コントロール ユニットは PT-CAN と FlexRay 間の診断用ゲートウェイとしても機能します。

注意!車高センサーの調整を行います。

VDM コントロール ユニットおよび車高センサーの交換後は、車高センサーの調整値を新たに学習する必要があります。そのために、BMW 診断システムのサービス機能「車高調整」を使用する必要があります。

注意!上下方向加速度センサーの調整を行います。

1 個または複数のダンパー サテライトの交換後は、必ず上下方向加速度センサーの調整を行う必要があります。そのためには、BMW 診断システムでサービス機能「上下方向加速度センサー調整」を利用する必要があります。
また、平らな場所に停車する必要があります。

コーディング/プログラミングに関する注意事項

交換後は VDM コントロール ユニットの新たなコーディングが必要です。

スイッチ オン条件

上下ダイナミック マネジメントが作動するには次の条件が必要です:

誤記、誤植が生じる可能性があるため、完全な一致を保証するものではありません、また将来予告なしに技術的変更が加えられることがあります。