車両システムの電源供給は、ハードウェアとソフトウェアの組合せにより確実なものとなります。電源供給にとって基本的な 次の 2 つのソフトウェア機能があります:
エネルギー コントロールは、常に十分な始動電流を得ることができるようにするためのものです。
エネルギー コントロールは、車両をエンジン停止時にもモニターしています。
エネルギー コントロールは、車両内のエネルギーを生成、保存および消費するすべてのコンポーネントを対象としています。
エネルギー コントロール用のデータは、複数のコントロール ユニットに分散されています。
パワー マネージメントは、エネルギー コントロールのコンポーネント システムです。パワー マネージメントは、エンジン コントロール ユニットにより行われます(DME または DDE:デジタル モーター エレクトロニクスまたはデジタル ディーゼル エレクトロニクス)。
パワー マネージメントは、走行中オルタネーターの出力およびバッテリーの充電状態を制御します。
電源供給の以下のコンポーネントについて説明します:
システム配線図
インデックス |
説明 |
インデックス |
説明 |
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1 |
デジタル モーター エレクトロニクス(DME)またはデジタル ディーゼル エレクトロニクス(DDE) |
2 |
オルタネーター |
3 |
スターター |
4 |
リア フューズ ボックス |
5 |
リレー ボックス |
6 |
電気ヒーター(ディーゼル エンジン搭載車両のみ) |
7 |
フロント ヒューズ ボックス付きジャンクション ボックス コントロール ユニット(JBE) |
8 |
バッテリー マイナス ターミナルのインテリジェント バッテリー センサー(IBS) |
9 |
バッテリー プラス ターミナル |
10 |
カー アクセス システム (CAS) |
11 |
フューズ ブロック |
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BSD |
ビット シリアル データ インターフェース |
Kl. 15 WUP |
ウェイク アップ ケーブル(ターミナル 15 ウェイク アップ) |
K バス |
ボディ バス |
K-CAN |
ボディ CAN |
PT-CAN |
パワー トレイン CAN |
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取り付けられているバッテリーの容量は、搭載されているエンジンおよび車両装備により異なります。必要容量の選択基準は以下のとおりです:
オルタネーターは、エンジン作動時にバッテリー充電のための種々の可変充電電圧を生成します。
可変充電電圧は、パワー マネージメントが温度および電流に応じて DME/DDE によりエンジン回転数を上げることで影響を受けます。
JBE は、車両の中央データ インターフェースです(バスへのゲートウェイ)。
JBE はジャンクション ボックスの構成コンポーネントです。ジャンクション ボックスは、ジャンクション ボックス コントロール ユニットとパアー ディストリビューションによるアセンブリーです。フロント パワー ディストリビューションと JBE は単体では交換できません。
パワー ディストリビューション内にはフューズとリレーが収められています。電源供給にとって特に重要なのは、以下のリレーです:
以下のフューズ ボックスがあります:
IBS は、専用のマイクロ プロセッサーを装備したメカトロニックなインテリジェント バッテリー センサーです。マイクロ プロセッサーは、電子モジュールの構成部品です。電子モジュールは、電圧、導通電流およびバッテリー温度を検知するためのものです。
以下のコンポーネントは、電子モジュールに格納されています:
IBS は、常時バッテリーの以下の値を測定します:
データ伝送のために、IBS はビット シリアル データ インターフェース(BSD)を介して、デジタル モーター エレクトロニクス(DME)または デジタル ディーゼル エレクトロニクス(DDE)と接続しています。
インデックス |
説明 |
インデックス |
説明 |
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1 |
バッテリー プラス ターミナルとバッテリー マイナス ターミナル間でのバッテリー電圧の測定 |
2 |
バッテリーの温度測定(T) |
3 |
インテリジェント バッテリー センサー(IBS)内のマイクロ プロセッサー(C) |
4 |
デジタル モーター エレクトロニクス(DME)またはデジタル ディーゼル エレクトロニクス(DDE) |
5 |
電流測定(A) [間接測定、測定抵抗(シャント)における比例電圧降下(V)による] |
6 |
バッテリー マイナス ターミナル |
7 |
バッテリー プラス ターミナル |
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BSD |
値の DME または DDE への伝送のためのビット シリアル データ インターフェース(BSD) |
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これらの測定データは、走行時および車両停止状態において読み出されます:
カー アクセス システムはターミナル制御に関与しています(Kl. R、Kl. 15、Kl. 30g)。
ターミナ制御は、電源供給に関する基本的な情報を提供します。
CAS は以下のコンポーネントおよびコントロール ユニットと接続されています:
DME または DDE は、以下のようにして電源供給に関与します:オルタネーター電圧が低下すると、DME/DDE は必要に応じてエンジン回転数を高めます。このためのソフトウェアは「パワー マネージメント」と呼ばれています。
DME/DDE は、PT-CAN(パワー トレイン コントロール エリア ネットワーク)のバス コンポーネントです。
DME/DDE は現在のバッテリー ステイタスを評価します。これにより DME/DDE は Kl. 30g-f にも影響を与えます。
レストレイント システムが作動すると、MRS コントロール ユニットは他のコントロール ユニットへメッセージを送信します。事故の程度に応じて、たとえば DME が電動フューエル ポンプをオフにします。
ビット シリアル データ インターフェースは、エンジン コントロール ユニット(DME または DDE)とオルタネーター間のデータ ケーブルです。
2 本のバッテリー ケーブルが、バッテリーをエンジン ルームと接続しています:
どのようなリレーが装着されているかは、搭載エンジンおよび国別仕様により異なります。
電源供給の以下のシステム機能について説明します:
パワー マネージメントは、エンジン コントロール ユニット(DME/DDE:デジタル モーター エレクトロニクスまたはデジタル ディーゼル エレクトロニクス)内のソフトウェアです。
パワー マネージメントは、電源供給の制御のための規定値を演算します。
モデル シリーズ E70 には、アドバンスド パワー マネージメント(APM)のみが使用されています。
アドバンスド パワー マネージメント
インデックス |
説明 |
インデックス |
説明 |
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1 |
アドバンスド パワー マネージメント(APM) |
2 |
バッテリーのデータ: |
3 |
インテリジェント バッテリー センサー(IBS) |
4 |
エンジン |
5 |
電気負荷 |
6 |
オルタネーター(G) |
7 |
バッテリー |
8 |
充電電圧の規定値設定 |
9 |
負荷遮断装置または要求出力の低減 |
10 |
アイドルアップ |
アドバンスド パワー マネージメントの機能範囲は多岐にわたるので、インテリジェント バッテリー センサー(IBS)が極めて重要になります。IBS は、パワーマネージメントにバッテリー ステイタスに関する情報を伝えます。外気温度を援用してのバッテリー温度の演算は、不要になりました。バッテリー温度は直接 IBS が測定します。
アドバンスド パワー マネージメントは、以下の機能を実行します:
エネルギー コントロールは、車両のエネルギー バランスをモニターし制御します。モニターおよび制御は、種々のコンポーネントの連係により行われます。エネルギー コントロールは、機能または信号、および供給特性曲線と制御信号の出力を相互に結び付けます。
以下の機能について説明します:
ターミナル制御
多くの電気負荷は、Kl. 30g または Kl. 30g-f を介して電源に接続されています。
しかしながら特定の電気負荷は、さらに Kl. 30 により直接電源供給を受けます。たとえば盗難防止装置は、イグニッションがオフになっていても作動状態になければなりません。
エネルギー コントロールのデータ転送
エンジンが停止している状態では、特定の電気負荷は Kl. 30g を介して次のようにスイッチ オフにされます:CAS(カー アクセス システム)が、定められた時間で Kl. 30g リレーをオフにします。
車両停止状態における電源供給
電気負荷の電源供給に関しては、これまで以下のターミナルが使用されてきました:
静電流モニター
静電流モニターは種々の理由から必要になります。
CAS(カー アクセス システム)は、ターミナル制御のデータを以下のようにして転送します:
CAS(カー アクセス システム)は、以下のターミナルに関連するリレーを制御します:
JBE(ジャンクション ボックス コントロール ユニット)は、以下のターミナルに関連するリレーを制御します:
これらのターミナルに接続されているコントロール ユニットが給電され、「ウェイク アップ」されます。
該当する車両システムが作動状態にされます。
電気負荷は、主に Kl. 30g および Kl. 30g-f により電源を供給されます.しかしながら特定の電気負荷は、さらに Kl. 30 により直接電源供給を受けます。たとえば盗難防止装置は、イグニッションがオフになっていても作動状態になければなりません。
車両の静止状態(Kl. R オフの 68 分後以降)においてバッテリー電流が 80 ミリアンペア(mA)を超過する場合(工場出荷時に設定可能)、DME/DDE にディフェクト メモリー登録がメモリーされ、顧客にその旨知らせるチェック コントロール メッセージが表示されます(静止状態におけるバッテリーの放電が増大)。
消費電流の増大が疑われる場合は、その都度静電流測定を実施する必要があります。
エンジン コントロール ユニットとオルタネーター間のビット シリアル データ インターフェースが断線している場合は、オルタネーター電圧は常時 14.3 V に制御されます。
以下の一般注意事項があります:
バッテリーのトリクル充電
ヒント!トリクル チャージャーはシガー ライターに接続しないでください。
シガー ライターは、ジャンクション ボックス内のフューズ ボックスによりリレーを介して電圧を供給されています。Kl. 15 オフの後、このリレーはオフになります。つまり、シガー ライターに接続されたトリクル チャージャーはバッテリーから切り離されます。バッテリーは、必ず外部スタート サポートにより充電してください。このようにした場合のみ、車両はエネルギーの充填を確認することができます。
インテリジェント バッテリー センサーの保護
注意!機械適応力による損傷の危険。
バッテリー交換
注意!バッテリー交換時の IBS およびケーブルの損傷の危険。
バッテリー交換時には、機械適応力により IBS(インテリジェント バッテリー センサー)およびケーブルを損傷してしまう可能性があります。
バッテリー交換の際には以下の点に注意してください:
ヒント!バッテリー交換時には、サービス機能「バッテリー交換を確認する」を実行します。
バッテリー交換には、生産ラインで取付けられたのと同じサイズ(容量)のバッテリーを使用します。車両が必要とするバッテリー容量は、カー アクセス システム(CAS)およびエンジン エレクトロニクス(DME/DDE)にコーディングされています。
オルタネーター
どのタイプのオルタネーターが取り付けられているかは、搭載エンジンおよび車両装備により異なります。
エレクトリック システム診断
バッテリー放電あるいはシステム回路での不具合が原因の故障の際は、様々な原因が考えられます。たいていの場合、バッテリーそのものが原因ではありません。この理由から、バッテリーの交換によって不具合が恒久的に解消されることは極めてまれです。
バッテリーを交換するのではなく、故障原因のシステマティックな診断が必要となります。
苦情を受けた故障は、車両が入庫した時にはすでに発生していないということが稀ではありません。このため車両にメモリーされているデータが、故障診断の基礎となります。バッテリー ステイタスおよび種々のバス システムにおける作動プロセスに関する情報は、関連するコントロール ユニットにメモリーされています。
これらの情報は、診断システムにより呼び出して評価することができます。診断システムにはそのためのテスト モジュールがあります。エレクトリック システム診断のテスト モジュールは、該当するコントロール ユニットからすべての関連データを読み出します。
インデックス |
説明 |
インデックス |
説明 |
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1 |
コントロール ユニット付きのシステム回路
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ジャンクション ボックス コントロール ユニット(JBE) |
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診断システム |
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デジタル モーター エレクトロニクス(DME)またはデジタル ディーゼル エレクトロニクス(DDE) |
5 |
バッテリー マイナス ターミナルのインテリジェント バッテリー センサー(IBS) |
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以下の情報が表示される:
エレクトリック システム診断は以下の故障を検知する:
バッテリーのデータは、カー アクセス システム(CAS)でコーディングされています。データは診断システムを使用して読み出すことができます。
誤記、誤植が生じる可能性があるため、完全な一致を保証するものではありません、また将来予告なしに技術的変更が加えられることがあります。