電動パワー ステアリング(EPS)システムは、車速対応のステアリング アシスト機能付き電子機械式パワー ステアリングです。システムのサーボ ユニットが、その時点で必要なステアリング アシストのトルクを直接、ステアリング コラムに伝達します。このトルクは、サーボ ユニットに内蔵の電子制御モーターから、ギア ユニットを経由してステアリング コラムへ伝えられます。サーボ ユニットに内蔵されたコントロール ユニットは、ステアリング アシストに必要なトルクを運転者の要求するステアリング モーメントとその他のインプット値から計算します。これらのデータにより、電子制御モーターが作動します。
EPS サーボ ユニット
EPS サーボ ユニットには、以下のコンポーネントが内蔵されています:
ステアリング アシストのトルクをステアリング コラムに伝達するためのギア ユニット付き電子制御モーター(非同期モーター)
電子制御モーター回転数およびステアリング モーメント検知センサー
車速、ステアリング モーメント、ステアリング回転速度、舵角、システム温度に基いてステアリング アシストを制御するコントロール ユニット車速対応式ステアリング アシストの特性曲線も同様に、コントロール ユニットに保存されています。
EPS システムの作動電圧域は、9 V 〜 16 V です。
関連コントロール ユニット
EPS コントロール ユニットは、CAN バスを経由して以下の信号を受信します。
ダイナミック スタビリティ コントロール(DSC)の信号: - 車速
デジタル モーター エレクトロニクス(DME)の信号: - エンジン回転数および Kl.15 ステイタス(メッセージ) - CAN バージョン - スポーツ スイッチのステイタス
舵角センサー(LWS)の信号: - 舵角 - 舵角符号 - 舵角センサー ステイタス (信号はすべてメッセージ形式)
メーター パネルの信号: - 走行距離 - デイ/ナイト ライト スイッチ(0 = オフ、1 = オン)
メーター パネルは EPS コントロール ユニットから CAN バスを経由して以下の信号を受信します。 - メーター パネルの EPS 警告灯の作動 (0 = オフ、1 = オン)
FDC/SMG ボタンは、オプションの走行ダイナミクス コントロール(FDC)装備車にのみ付いています。
このボタンは、DME コントロール ユニットによって読み取られます。ボタン ライトは、EPS コントロール ユニットによって制御されます。このボタンで、運転者はステアリング アシストを行うため、EPS システムをスポーティーな特性曲線に切り換えることができます(ステアリング モーメントが上がる)。
オプションの走行ダイナミクス コントロール(FDC)非装備車の SMG ボタン
このボタンは、DME コントロール ユニットによって読み取られます。ボタン ライトは、EPS コントロール ユニットによって制御されます。
EPS システムは、ステアリングのパワー アシストを行い、アクティブ リセットを制御します。システムには、車速に対応してパワー アシストを電子的に制御するサーボトロニックが内蔵されています。 EPS コントロール ユニットは、以下のインプット値から必要なパワー アシストを算出します: - 車速 - 運転席側ステアリング モーメント - 舵角 - ステアリング回転速度 - スポーツ スイッチ(オプション FDC) - EPS システム温度
EPS コントロール ユニットには、サポート特性および減衰特性の特性曲線(標準およびスポーツ)が保存されています。インプット値から演算された値が、そのつど特性曲線に基いて必要なサポート トルクを生み出します。電子制御モーターは、ギア ユニットを経由してサポート トルクを直接ステアリング コラムへ伝達します。 EPS システムは、エンジン回転数信号が > 300 rpm で、Kl.15 = オンのときに作動します。Kl.15 = オンとは、Kl.15 ローカル = オンで、CAN バス上の DME 信号ステイタス Kl.15 = オンを意味します。 メーター パネルには、EPS システム警告灯があります。EPS システム警告灯は、ステアリング アシストが著しく減少した場合、またはアシストが完全にオフになった場合に作動して運転者に伝えます。EPS システム警告灯は、CAN バス経由で EPS コントロール ユニットにより作動します。
保護機能”
過電圧(> 17 V)時には、ファイナル ステージ保護のため、パワー アシストがすぐにオフになります。メーター パネルの警告灯が作動し、ディフェクト メモリーに登録されます。電圧が再び 16 V 以下になると、パワー アシストが 2 秒以内に現時点で求められている値に戻ります。警告灯が消灯します。
電圧降下(< 9 V) 時には、パワー アシストはすぐにオフになります。アシストが完全に行われなくなると、メーター パネルの警告灯が作動します。その後、ディフェクト メモリーへの登録が行われます。電圧が再び 10 V 以上になると、パワー アシストが 2 秒以内に現時点で求められている値に戻ります。警告灯が消灯します。
システム過熱時には、EPS システムを冷却するため、パワー アシストが低減されます。低減しても効果がない場合、パワー アシストが完全に行われなくなり、メーター パネルの警告灯が点灯します。その後、ディフェクト メモリーへの登録が行われます。システム温度が再び通常の温度範囲になると、パワー アシスタトが 2 秒以内に現在求められている値に戻ります。警告灯が消灯します。
CAN バス信号の異常、または信号がない場合の特性
DME コントロール ユニットのエンジン回転数信号:
DSC コントロール ユニットの車速:
舵角センサーのメッセージ:
走行中の全 CAN バス信号の故障(CAN バスの一般的バス故障):